管理職や上司の立場にある人こそ、電話応対のマナーをおろそかにしてはいけません。
なぜなら、あなたの一言一動が部下にとっての「手本」となり、ひいては会社全体の印象を左右するからです。
どれほど仕事ができる上司であっても、電話対応が雑だったり、横柄な態度をとってしまえば、部下の信頼は簡単に揺らぎます。
さらに、電話応対は社外との窓口となる場面でもあるため、その振る舞いひとつで「この会社はしっかりしている」と評価されることもあれば、「雑で失礼な企業だ」と見られてしまうこともあるのです。
そこで本記事では、上司・役職者として最低限おさえておくべき電話マナーを解説しつつ、ありがちなNG対応や改善策についても具体例を交えてご紹介します。
電話応対に不安を感じる方も、この記事を読むことで自信をもって業務に臨めるようになるでしょう。
それでは早速、上司に求められる電話マナーの本質から確認していきましょう。
1. 管理職としての電話マナーが問われる理由
・部下は上司の言動を見て電話応対を学んでいる
組織の中で電話応対は、ごく日常的な業務のひとつです。
しかし、部下にとってその「日常」が、電話マナーの基礎となる大切な学習機会でもあります。
とりわけ、入社1年目や異動してきたばかりの社員は、業務マニュアルや研修以上に、日頃の上司や先輩の振る舞いを観察して行動を学んでいます。
つまり、上司が「もしもし」と名乗らずに電話に出たり、「うん」「了解」などフランクすぎる表現で会話しているのを聞けば、それが「職場で許される電話対応」として刷り込まれてしまうのです。
たとえば、ある大手商社では、入社2年目の社員が取引先との電話中に「~っすね」と話し、相手からクレームが入ったことがありました。
調査の結果、その社員の上司が普段から部下に対してそのような口調を使っており、無意識のうちに模倣していたことが判明しました。
このように、上司の振る舞いがそのまま部下の基準となるため、管理職には「見られている意識」が常に求められます。
・電話対応の質が組織全体の評価に直結する
社外とのファーストコンタクトが電話であることは、今でも少なくありません。
特に役職者が電話に出る場面では、相手もそれなりの期待と緊張をもって応対しています。
その際、「失礼いたしました」「○○株式会社の○○でございます」といった基本的な挨拶や名乗りがなく、ぞんざいな応対をされれば、たとえ中身のある会話をしても、印象はマイナスに傾いてしまいます。
また、たとえばあなたが製造業の管理職で、クレーム対応の電話を受けたとしましょう。
その際、相手の話を遮ったり、謝罪よりも言い訳を優先するような態度をとると、「この会社は責任感がない」といった印象を相手に与えます。
このような応対は、クレーム対応の一件に留まらず、その後の取引関係や企業評価にも影響を及ぼすリスクがあるのです。
・「忙しいから雑に」は通用しない時代背景がある
近年では、ビジネスマナーに対する社会の目が一層厳しくなってきています。
特にSNSの普及により、「この会社、電話対応ひどかった」などの投稿が瞬時に拡散される時代です。
つまり、たとえ「忙しかったから仕方ない」という言い訳が内輪では通っても、社外の評価には一切通用しないということです。
実際に、某IT企業の役員が社外からの電話に対し、「はい、何ですか?」とぶっきらぼうに応じたことがSNSに投稿され、数日間にわたり企業名とともに炎上した事例もあります。
管理職は組織の顔であり、すべての電話応対が企業ブランドに直結しているという認識を持つ必要があります。
したがって、時間に追われていたとしても、最低限のマナーと礼儀を保った応対を徹底することが不可欠です。
それでは次に、管理職として押さえるべき電話応対の基本マナーを具体的に見ていきましょう。
2. 上司としての電話応対の基本マナー
・名乗りと挨拶を省略しない丁寧な応対が信頼を築く
電話応対の第一声は、言わば名刺代わりです。
たとえば、「はい、○○株式会社の営業部、部長の田中でございます」と、はっきり名乗ることで、相手に安心感と信頼感を与えることができます。
一方、「はい、田中です」や、極端な場合は「はい、何ですか?」のような対応では、相手は混乱し、場合によっては失礼と感じてしまいます。
これは社外だけでなく、社内の部下に対しても同じです。
たとえば、内線でかかってきた電話にも「お疲れ様です。田中です」と丁寧に応じる姿勢を見せることで、部下からの信頼も高まります。
日常業務の中でおろそかにしがちなこの基本を、あえて丁寧に行うことが、管理職の品格を示す第一歩となるのです。
・要点を簡潔にまとめる伝達力が求められる
管理職には、長々と話すのではなく、要点を的確にまとめるスキルが求められます。
たとえば、会議の連絡を電話でする場合でも、「○月○日、10時から会議室Bで経営会議があります。資料は前日までにメールで送ってください」と簡潔に伝えることで、相手の理解も早まり、業務がスムーズに進みます。
逆に、「えーっと、あの、来週ですけど、あの会議があってですね……」と前置きばかりが長くなると、聞き手は情報を整理できず、ミスの原因にもなりかねません。
特に部下は、上司の話し方を参考にするため、明確で簡潔な伝え方を常に意識することが大切です。
・相手に敬意を持った言葉遣いが模範となる
電話応対では、相手が見えない分、言葉遣いや口調がすべての印象を決定づけます。
そのため、語尾の柔らかさや敬語の正確さが非常に重要です。
たとえば、「伺います」「おっしゃる通りです」「お手数をおかけします」など、クッション言葉や敬語を正しく使うことで、相手に対する配慮が伝わります。
一方、「分かった」「言っとくよ」といった命令調やタメ口は、部下が同じ言葉遣いを真似してしまう原因になります。
あるメーカーでは、部長が社内外問わず「了解」とだけ答えることが常態化しており、若手社員もそれに倣って同様の口調を使い、取引先から「礼儀がない」と苦情が入った事例がありました。
このように、言葉の選び方は社内文化にも影響を及ぼします。
管理職が敬語の使い方を徹底することで、社内の言葉遣いの質も自然と引き上げられるのです。
それでは次に、部下の信頼を得るための電話応対の姿勢について見ていきましょう。
3. 部下の信頼を得るための電話応対姿勢
・部下の前でも丁寧さを欠かさないことが信頼につながる
上司の電話応対は、思っている以上に部下に見られています。
特にオフィスのフロアがオープンな環境であれば、上司の一挙手一投足は部下に筒抜けです。
その中で、電話応対だけ口調が荒くなったり、相手に冷たい態度を取ったりすると、部下は上司の人間性に疑問を抱きかねません。
たとえば、「あの人、普段は優しいのに電話では急に偉そうになるよね」といった陰口が出てくるのは、このギャップが原因です。
信頼される上司は、誰に対しても丁寧に接し、電話でもそれを貫いています。
その姿勢こそが、「この人についていきたい」と思わせる重要な要素なのです。
・電話を取り次ぐ際の指示や態度に注意する
電話を部下に取り次ぐ際の言動も、上司の品格を問われるポイントです。
たとえば、部下に向かって「ちょっと代われ」や「お前行けよ」といった命令口調を使っていないでしょうか。
たとえ冗談でも、そのような言い方は周囲に悪い印象を与えます。
代わりに「○○さん、お手数ですが対応お願いできますか?」といった言い回しに変えるだけで、場の空気は格段に良くなります。
また、相手に「今、代わりますのでお待ちください」と丁寧に伝えてから受話器を渡すなど、細かい配慮が求められます。
こうした小さな所作の積み重ねが、部下にとって「尊敬できる上司」と映るのです。
・電話対応を後回しにしない姿勢が組織文化を作る
忙しい時期になると、電話対応が後回しにされがちです。
しかし、上司が「電話は後でいい」と言うような姿勢を見せると、部下もその行動を正当化するようになります。
結果として、「折り返しの電話を忘れる」「急ぎの要件を放置する」などのミスが増え、組織全体の信頼を損なうリスクが高まります。
たとえば、ある物流会社では、上司が「後で折り返す」と言っていた電話を何度も忘れてしまい、顧客との取引が打ち切られる事態となりました。
このような事例を防ぐには、上司自らが率先して電話に出る、メモを取ってすぐに対応するなど、「電話は重要な仕事の一部」と認識することが重要です。
次に、上司がついやりがちなNG電話応対と、それをどう改善するべきかを具体的に掘り下げていきます。
4. 上司がやりがちなNG電話応対とその改善策
・【NG例】無愛想な第一声 →【改善】丁寧な名乗りと挨拶を徹底
ありがちなNGパターンとして、「はい、○○です」とだけ名乗る、あるいは無言で電話に出てしまうケースがあります。
このような対応は、相手にとって不安や不快感の原因になり、第一印象を大きく損なう要因です。
改善策としては、電話に出たらまず「お電話ありがとうございます。○○株式会社の△△でございます」と丁寧に名乗ることが基本です。
この一言で相手は安心し、会話のスタートがスムーズになります。
特に社外からの電話では、名乗りがないだけで「対応が悪い会社」と評価されかねません。
・【NG例】「うん」「了解」などのフランクすぎる返事 →【改善】敬語を正しく使う
電話応対中に「うん」「分かった」「了解」などのカジュアルな表現を使ってしまう上司は少なくありません。
部下にとっては「上司が使っているから」と、無意識のうちに真似してしまい、社外対応でも同様の言葉遣いをしてしまうリスクがあります。
これを防ぐためにも、「はい、かしこまりました」「承知いたしました」など、丁寧で正しい敬語を常に使用することが大切です。
部下の言葉遣いを正したいなら、まず上司自身が模範を示す必要があります。
・【NG例】電話中に周囲への配慮がない →【改善】声のトーンと内容に気を配る
電話中に大声で話したり、周囲に配慮のない発言をしてしまうと、職場の雰囲気を悪くする原因になります。
たとえば、電話の内容が他の社員に聞かれては困る場合でも、気にせず話し続けると、「この人は配慮に欠ける」と感じられてしまいます。
改善策としては、必要に応じて会議室など静かな場所に移動する、または電話中に周囲の人への一声「少し大きな声になりますが失礼します」などの配慮を示すことが有効です。
・【NG例】電話内容を忘れてしまう →【改善】メモと復唱を習慣化する
「忙しくて忘れてしまった」という理由で、電話内容を正確に伝えられなかったり、伝達漏れが発生することがあります。
このようなミスは、上司の信頼を損なうだけでなく、組織の信用問題に発展しかねません。
対応策としては、通話中に要点をメモし、「○○の件で、△△の対応をすればよろしいのですね」と復唱して確認する習慣をつけましょう。
これは社外だけでなく、部下からの電話依頼にも有効です。
このようなNG例は、どれも「ちょっとした気の緩み」から発生しますが、管理職としての信頼性を大きく左右するポイントでもあります。
次の章では、実際に職場で実践できる電話応対の改善ポイントを紹介します。
5. 実践編|明日からできる電話応対の改善ポイント
・電話応対チェックリストで自己点検を習慣化する
まず取り入れたいのが、定期的な自己チェックです。
以下のような簡単なチェックリストを活用することで、日々の電話応対の質を可視化し、改善点に気づきやすくなります。
- □ 第一声で名乗り・挨拶を丁寧にできているか
- □ 声のトーンやスピードは適切か
- □ クッション言葉や敬語を正しく使えているか
- □ 話の要点を簡潔に伝えているか
- □ 復唱とメモを習慣化できているか
週に一度、自己またはチーム内でこのチェックを行うだけでも、電話応対への意識は確実に変わります。
・電話応対を部下とロールプレイで共有する
上司が自分の電話応対スキルをチームで共有することで、組織全体のレベルアップにつながります。
おすすめは、定例のミーティングで5分だけ「電話応対ロールプレイ」の時間を設けることです。
たとえば、上司役・部下役に分かれて実際に電話対応を演じてみることで、リアルな気づきが得られます。
「声が小さい」「語尾が聞き取りにくい」「復唱が不足していた」といった具体的なフィードバックが可能になり、指導の質も上がります。
・クレーム対応こそが上司の見せ場と心得る
クレーム対応の電話は、誰しも避けたい場面ですが、ここにこそ上司としての真価が問われます。
部下が「上司に任せて大丈夫」と安心できる対応をすることで、信頼感は一気に高まります。
たとえば、クレームの電話を受けた際には、
- ① 相手の話を最後まで遮らずに聞く
- ② 謝罪の意を示しつつ、事実確認を冷静に行う
- ③ 今後の対応方針を明確に伝える
この3ステップを押さえることで、相手の怒りを鎮め、信頼を回復することができます。
クレーム対応で見せた冷静さと誠意は、部下にとって「学び」となり、チーム全体のレベルアップにも貢献します。
では最後に、この記事のポイントをまとめて振り返りましょう。
6. まとめ|電話マナーの積み重ねが、信頼される上司をつくる
本記事では、上司として部下に信頼されるために欠かせない「電話応対のマナー」について解説してきました。
どれも基本的な内容ではありますが、日々の業務の中で軽視されがちなポイントでもあります。
▼本記事の要点
- ✔ 部下は上司の電話応対をよく見ており、丁寧さ・落ち着き・配慮が信頼につながる
- ✔ 無愛想な第一声やラフな言葉遣いはNG。正しい敬語と明るい声で応対を
- ✔ 電話を後回しにせず、即対応する姿勢が職場全体の文化をつくる
- ✔ ロールプレイやチェックリストで日常的に改善を図る
- ✔ クレーム対応こそが、上司としての信頼とリーダーシップを示す最大の場
上司の電話応対は、単なる「会話のやり取り」ではありません。
それは、組織の文化を形づくるリーダーシップの表れであり、部下にとっての“教科書”です。
だからこそ、一つ一つの応対に丁寧さと誠意を込め、信頼される上司を目指しましょう。
電話マナーの積み重ねが、あなたの人間力を支え、チームの結束力を高める大きな一歩になります。
この記事が、管理職としてのあなたの電話応対力を磨く一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。